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骨粗鬆症の治療

普段からの予防意識を大切に―

骨粗鬆症とは骨密度の低下により全身の骨がもろくなり、骨折しやすい状態に陥ることを言います。年齢を重ねるほどに誰にでも起こりえる疾患であり、特に閉経後の女性は急激な進行をしやすいため注意が必要です。骨密度の低下に早期に気づくことはもちろん大切なことですが、骨粗鬆症においてはまずは普段からの「予防する」という発想が非常に重要なカギを握っています。

いつのまにか骨折

「いつのまにか骨折」という言葉を耳にしたことはありませんか?転倒したりぶつけたり、骨折のきっかけとなるような明らかな出来事がなくても、骨密度の低下によって気づかぬうちに背骨が圧迫骨折を生じていることがあります。たまたま受けた検査で背骨を骨折していることがわかったり、検診でご自身の骨密度の低さを知りショックを受けられる患者様は実際の診療現場においてもよくみられます。「いつのまにか骨折」という名前の通り、くしゃみや重いものを持ち上げるなどといった日常の些細な衝撃が骨折のきっかけとなってしまうこともあります。

 

「背中が曲がる」「背が縮んだ」「腰が痛い」などといった異変は骨粗鬆症のサインかも!

骨粗鬆症はもともと症状のある疾患ではありません。さらには長期間にわたって緩やかに進行していくことが多いためどうしても発見が遅れがちになるという難しさを抱えています。骨折にまで至らないケースでも強い痛みが生じたり、背中の曲がりや背が縮むといった異常が現れることが多いです。

特に警戒すべき背骨の骨折

骨粗鬆症で起きる骨折の多くは背骨です。背骨は「立つ」「歩く」などといった日常生活の基本となる動きに直結する重要な部位です。背骨が折れると寝たきりの状態を余儀なくされてしまったり、生活の質が著しく低下するなど深刻な事態を招きます。その他にも体重を支えている股関節の大腿骨頚部や手首の骨である橈骨遠位端といった重要な場所で骨折が起きやすいため注意が必要です。重篤な事態に陥る前に、まずはご自身の今の骨の状態を正しく知る機会を積極的に設けることが大切です。

 

骨粗鬆症が起きるメカニズム

骨は「破壊」と「再生」を繰り返して日々作り直されています

髪や皮膚と同じように、骨でも日々新陳代謝が起きます。骨の中には破骨(はこつ)細胞と骨芽(こつが)細胞と呼ばれる2種の細胞があり、息のあった連携を繰り広げながら骨を作り直す作業が行われています。古くなった箇所を破骨細胞が壊し(骨吸収)、新たに埋め戻す作業(骨形成)を骨芽細胞が担います。しかし何らかの異常によって連携が乱れると、骨の再生サイクルがうまく回らなくなり質の悪い骨を作り出すようになります。原因のひとつに加齢が挙げられます。骨を形成する骨芽細胞は高齢になるにつれて働きが弱まり、骨を壊す側の破骨細胞の作用が強まってしまいます。その結果、骨がスカスカで脆くなり骨粗鬆症が加速します。

 

ご高齢の方だけでなく、閉経を迎えられた女性も要注意!

骨粗鬆症は特にご高齢の患者様が多いですが、閉経を迎える更年期の女性も注意が必要です。骨の新陳代謝と女性ホルモン(エストロゲン)は密接な関係を持っており、ホルモン量の低下とともに骨密度も急激に低下してゆきます。さらに骨を支える筋肉量も男性と比べると女性は少なく、骨粗鬆症の加速とともに骨折しやすい内部構造となってゆきます。

その他の危険因子
  • 既存骨折があること
  • 喫煙
  • 飲酒
  • 運動不足
  • 喘息やリウマチなどによるステイロイド薬の服用
  • 低体重(BMI22以下) など

 

 

骨粗鬆症は生活の質(QOL)を大幅に低下させるだけでなく、
将来的にもさまざまな問題を生じさせます

骨粗鬆症は骨折の危険だけでなく、骨の変形による体全体の大きなゆがみを生じさせます。直接的に感じる痛みだけでなく、背骨が曲がると内臓の圧迫から逆流性食道炎や便秘など体のあちこちでトラブルを起こすようになってゆきます。強い痛みやしびれを感じる場合には、さらに運動を避けるようになってしまうため、肥満や栄養の吸収不足など全身疾患に関わる複雑な問題へと発展してゆきます。

 

当院では高度な骨密度検査を行っております

昨今では健康診断等でも多く骨密度検査が取り入れられるようになりましたが、明らかな異常の有無を見つけ出すという主目的から、検査項目も限定されており内容は簡易的です。確認される部位も手や足のかかとが一般的で、その他の部位の確認やさらなる詳細な分析を加えるためには専門的な機器を取り揃えた整形外科にお越しいただく必要があります。当院では精密な分析を可能とするX線を用いた骨密度検査を実施いたしております。「立つ」「歩く」などといった人体の重要な動きを支える上で欠かすことのできない背骨や大腿骨を重点的に確認することができます。

 

診断に必要となる各種検査について

レントゲン

レントゲン検査では背骨の性状や形態を確認します。「いつの間にか骨折」を含めて、骨折の既往の有無が、骨粗鬆症の診断ならびにリスク評価にも重要な項目になります。

骨密度検査

X線を用いて組織など骨内部の状態を明らかにします。当院で使用している計測装置は被ばく線量の極めて少ない安心安全な検査機器です。痛みもなく短時間で終了できます。

YAM値(ヤム値)

骨密度検査において注目すべきはYAM値(Young Adult Mean)です。
「若い人の骨密度を100%としたとき、骨密度がどのくらい低下しているか」を示す大事な値です。YAM値が70%以下である場合には明らかな骨の脆弱性が認められるため骨粗鬆症が疑われます。

血液検査、尿検査

骨粗鬆症もさまざまなタイプがあります。骨を破壊するスピードが速まっているのか、骨を作り出す能力のほうに問題がみられるのか、他の病気が隠れている可能性も十分考えられるため採血や尿による分析が必要となります。

 

脊椎圧迫骨折・大腿骨頚部骨折・橈骨遠位端骨折の既往がある方は早期の治療開始が望まれます

過去に三大骨折(脊椎圧迫骨折・大腿骨頚部骨折・橈骨遠位端骨折)を患われた経験のある方は、将来的に骨粗鬆症になるリスクが高いことがわかっています。三大骨折の既往のある方はできるだけ早期に骨粗鬆症の治療を開始されることが望ましいとされています。

脊椎圧迫骨折(せきついあっぱくこっせつ)

前かがみの姿勢で重いものを持ち上げるなど、背骨に過度な負担がかかる姿勢で起きやすい骨折

大腿骨頚部骨折(だいたいこつけいぶこっせつ)

尻もちをつくような転倒や脚を捻った際に受傷する股関節の骨折

橈骨遠位端骨折(とうこつえいいたんこっせつ)

転倒した際に無理に手をついて受傷する骨折
詳しくはこちら

 

骨粗鬆症の治療にあたっては「運動」と「食事」が基本軸となります

骨粗鬆症の治療にあたってはあくまで「運動」と「食事」の2つが基本となります。それに加えて骨を作るサイクルを整えるために適宜、薬物療法が用いられます。

運動

骨は適度な負担をかけることでさらに強くなるという性質があります。無理のない範囲で適度な運動を加えることで骨に良い刺激が伝わり、骨代謝が活性化されます。同時に骨を支えるための適度な周りの筋肉量も必要となります。当院では効果的に鍛えるリハビリテーションなど、理学療法士による専門的知識に基づいた個別性の高い運動指導を行っております。

食事

骨を作るために主に必要とされる成分はカルシウム、ビタミンD、ビタミンK、タンパク質などです。毎日の食事にバランス良く取り入れて過不足なく摂取することが大切です。

薬物治療

食事からの栄養吸収と運動による適度な負荷に加え、骨代謝サイクルをさらに活発に促すための飲み薬や注射剤を必要に応じて追加します。

「骨吸収(骨を破壊する)」を抑制する薬(例)
  • ビスホスホネート製剤 ※錠剤・ゼリー剤・注射剤など
  • 選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)
  • 抗RANKL抗体薬
「骨形成(骨を作る)」を促進する薬(例)
  • 副甲状腺ホルモン製剤テリパラチド
「骨吸収」と「骨形成」両方に作用する薬
  • ヒト化抗スクレロスチンモノクローナル抗体製剤
骨の代謝に必要な栄養素
  • 活性型ビタミンD
  • ビタミンK
  • カルシウム

Q.骨粗鬆症の薬をたくさん飲めば骨は早く良くなるの?

A.いいえ、それは違います。骨は骨吸収(破壊)と骨形成(修復)を絶妙な連携で交互に繰り返しながら新しい骨を作ります。ご自身の判断で薬を乱用したり、大量のサプリメントを服用するなどといった行為は、骨を作るシステムそのものをさらに混乱に陥れる危険があります。薬の力によって骨形成を促す作用が過剰になれば骨は硬くなり過ぎてしまい、逆に衝撃に対して折れやすいもろい骨を作ります(非定型骨折)。健康な骨ほど適度なしなやかさをあわせ持っています。症状や状態を熟知した医師の指導のもと、その方にあった正しい治療を進めることがとても重要となります。

 

治療にあたっては根気強い取り組みが重要となります

骨粗鬆症は加齢とともに誰でも起こり得る疾患です。まずは早期に今のご自身の骨の状態を正しく知っておくことが大切です。近年ではさまざまな研究が進み、治療法も多岐に渡る取り組みが行われるようになりました。しかしながら骨の再生にあたっては緩やかな改善を見守ることが基本であり、適度な運動習慣と栄養バランスを考えた毎日の積み重ねが大切となります。万一、骨粗鬆症となった場合にも、それ以上の進行を食い止めるために薬物投与によるサポートを行っております。

当院では一人一人の患者さんの状態にあわせて細かな治療プログラムを作成いたしております。転倒リスクを防ぐための効果的なリハビリのご提案もあわせて行っておりますのでお気軽にご相談ください。

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