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股関節の痛み

股関節の異常は日常生活動作(ADL)・生活の質(QOL)ともに深刻な影響を与えます

股関節は「立つ」「歩く」「座る」といった人間の基本的な動きの多くに直接関わる部位となります。中でも歩く動作においては片方の足に交互に全体重が乗ることにもなるため、日常的に大きな負担がかかっています。ある研究によると股関節には体重のおよそ3倍もの負荷がかかるとも言われており、そのため股関節に何らかの異常が発生すると強い痛みに加えて骨の変形が起こりやすくなります。さらに股関節は脊柱からひざにいたるまでさまざまな動きに連動しており、日常生活動作(ADL)において深刻な事態を招く危険が高まります。次々と起こる障害によって寝たきりの状態を余儀なくされるなど生活の質(QOL)も急激に低下します。治療にあたっては総合的な判断に基づいた専門的な訓練が必要となります。

股関節のメカニズム

 股関節は大腿骨(だいたいこつ)と呼ばれる太ももの骨と、それを受ける骨盤との関係で成り立っています。私たち人間が前後左右斜めに足を動かすことができる理由は、大腿骨の先端がボール状に丸くなっており(骨頭)、それを受ける骨盤側の臼蓋(きゅうがい)と呼ばれる部分が滑らかなお皿状の形をしているためです。しかし、この骨頭のかぶさる臼蓋の割合が浅くなってしまうと骨がズレやすくなって変形が起こります。生まれつき股関節の形状に問題がみられる方もいらっしゃいます。乳児検診で異常が見つかるケースが多く、乳幼児期から装具を用いた適切な治療を施したり、赤ちゃんを抱きかかえる姿勢やオムツ替えをする際の足の動かし方など専門的なケアを加えれば、成長とともに改善が図られることも多くあります。股関節の異常は何よりも早期に正しい治療を開始することが重要です。重度な変形がみられる場合には手術治療が用いられます。

股関節に異常を生じる原因

骨折

転倒した際の強い衝撃によって股関節を骨折することがあります。特に大腿骨の頸部で骨折が起こりやすく、骨粗鬆症を患う高齢者や更年期以降の女性に多発することが特徴的です。股関節を骨折すると立つことも歩くことも難しくなります。

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関節部分の変形

先天的な形状不全による問題や、加齢変化によっても股関節のクッションとなるべき軟骨にすり減りが生じます。臼蓋と大腿骨の骨頭が過度にこすれあい変形が加速します。

股関節周りにある筋肉の付着部で起きる炎症

 太ももの前側にある筋肉の腱が骨盤の付着部で損傷を受けると(大腿直筋部分損傷)、周囲に炎症を引き起こします。関節周囲の軟部組織損傷は拘縮を招きやすく、適切な治療を行わないと動作時痛が続いてしまう場合があります。

主な症状

・股関節部分の強い痛み ・歩行困難 ・立つことが難しい ・座ることが難しい
・階段を上り下りする際に足のつけ根が詰まる感じがする ・足の爪切りが難しい
・靴下が履きづらい ・車やバスの乗り降りの際には必ず手すりが必要となった 
など

股関節はさまざまな日常動作に関わる重要な部位です。すでに何らかの異常や上記のような場面で心当たりを感じたらまずは早期に診察にお越しださい。

代表的な疾患

変形性股関節症

股関節の異常で実際の診療現場においても患者数の最も多い疾患です。股関節部分の変形によって軟骨が過度にすり減り、骨の変形が加速します。進行するほど強い痛みを伴うようになり、自然と可動域(動かせる範囲)に制限が生まれます。歩行困難など日常生活を送るうえで必要なさまざまな動きに直結する深刻な障害が起こり始めます。

【股関節に変形を引き起こす主な要因】

発育性股関節形成不全(先天性股関節脱臼・臼蓋形成不全)

生まれつきの股関節の形状的な問題によって股の開きが悪くなったり、脱臼が起こりやすくなる病気です。生後間もなくの健診で指摘されることもあり、抱っこ指導や必要であれば装具を装着することもあります。

関節リウマチ

関節内部の炎症によって変形が引き起こされる病気です。関節リウマチは関節内部で滑膜組織が異常増殖を起こすことで慢性的な炎症を生じます。進行すると関節が破壊され、さまざまな機能障害を引き起こすこととなります。

関節リウマチについて詳しくはこちら

大腿骨頭壊死症

特発性大腿骨頭壊死症は国の難病指定となる疾患です。原因は明らかにされていませんが、股関節骨折や脱臼に伴う続発性のもの以外に、特発性では副腎皮質ホルモン(ステロイド)投与による影響、糖尿病や過度な飲酒などがひとつの要因として挙げられています。骨の先端部分に通う血管が詰まりを起こし、血流が悪くなることで骨が壊死を起こし変形が始まります。骨の壊死は急激に起きることもあれば、長い時間をかけてゆっくりと進行するケースもあるなど人によってさまざまですが、他の部位に比べると壊死するスピードは比較的速いのが特徴的です。年齢問わず起こりやすい病気であるため警戒が必要です。

大腿骨頚部骨折

大腿骨頚部骨折では股関節部(脚のつけ根)に痛みがあり、ほとんどの場合、立つことや歩くことができなくなり、手術治療が必要となります。三大骨折(腰椎圧迫骨折・大腿骨頚部骨折・橈骨遠位端骨折)のひとつでもある大腿骨頚部骨折は、年間17万人ほどの患者さまが手術を受けられている大変起こりやすい骨折です。転倒や事故による怪我だけでなく、骨粗鬆症が大きな引き金となりやすい疾患であるため、ご高齢の方や更年期以降の女性は特に注意が必要です。

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股関節周りにある筋肉の炎症

股関節周りは大きな筋肉で支えられています。陸上競技やサッカーなど激しい運動を行う際には特に筋肉の付着部で痛みを伴う炎症が起こりやすくなります。スポーツ整形においてもご相談いただけます。

当院では提携の高次医療機関へのご紹介を随時行っております

股関節の変形が重度の場合には、高次医療機関にて専門的な手術治療をお受けいただく必要があります。また、乳幼児の発育性股関節形成不全に関しては、こども医療センターなど小児専門の施設にて治療を受けられることをおすすめします。いずれにおいても当院から随時専門医療機関へのご紹介を行っておりますのでご相談ください。

診断に必要となる各種検査について

股関節周りの疾患については各種画像診断が用いられます。

レントゲン

体に負担の少ないX線を用いて骨に関する異常の有無を詳しく観察することができます。

超音波検査

筋肉の炎症の有無をはじめ、股関節を実際に動かしながら内部の状態を詳細に確認することができます。

MRI

腱や靭帯、筋肉や血液の流れなど軟部組織に関する異常を精緻に分析することができます。

治療について

症状や程度によって治療内容は異なりますが、股関節にまつわる疾患は基本的には対症療法となります。強い痛みがみられる場合にはその痛みを軽減するような処置を適宜行うなど、その方の症状に応じた細やかな治療内容が検討されます。

薬物療法

消炎鎮痛剤やブロック注射などを用いた投薬治療で痛みを緩和します。

装具治療

杖や装具などを用いて日常生活に関する動きの改善、歩行の際の痛みを軽減します。

物理療法

当院では機器を用いて効果的な筋肉のリラクゼーションを図り、血行改善や代謝の循環を促進させる物理療法が用いられます。

運動器リハビリテーション

物理療法と同時に運動器リハビリテーションにて股関節周りの筋肉や靭帯のストレッチ、柔軟性を高める筋力訓練などを行って症状の軽減を図ります。股関節だけをピンポイントで治すのではなく、股関節を取り巻く筋肉の強化、脊柱からひざにかけてひとつの大きな運動器としてとらえた効果的なリハビリテーションが効果的です。例えば、腰を含めた大きな動きのストレッチや体重を支える筋肉の柔軟性を高めるトレーニングなど総合的な視点を有する改善が求められます。

その他にも日常生活動作の確認や負担のかかりにくい動きを学ぶトレーニングなども随時行っております。当院では疾患の進行抑制につながる多彩なリハビリテーションを取り扱っております。

手術治療

股関節の変形が顕著になると、日常生活を送るのが困難になるほど重度な症状がみられることがあり、その場合には人工股関節置換術などといった高度な手術治療が用いられます。また大腿骨頚部骨折の場合もそのほとんどの場合で手術治療を必要とします。

姿勢の悪さや肥満を原因とする股関節の異常も多くみられます

骨盤は正常時には少し前に傾くような形をしています。それが腰(せぼね)が曲がるなどといった姿勢の乱れが起きると徐々に後ろ側に傾くようになってゆきます。骨盤が後ろに傾くと当然のことながら股関節の臼蓋部分のかぶり浅くなってしまうため、股関節に異常が生じやすくなります。「ヒップスパインシンドローム」とも呼ばれており、脊柱変形からくる股関節の変形にお悩みの方も実際の診療現場では多くみられます。また、生活習慣の乱れから肥満が起きると股関節にかかる負荷がさらに増大し、支えきれなくなった骨はいずれ変形や痛みを生じます。いずれも初期対応が何よりも重要であり、早期診断・早期治療が鉄則となります。

治療にあたっては股関節周りの筋力強化をはじめ、脊柱やひざまでひとつの運動器としてとらえた総合的な改善が求められます

股関節の異常は生まれつきの問題であるケースも多くみられます。乳幼児から診断はつきやすく、乳児健診では必ず確認すべき項目となります。早期に治療が開始できれば、比較的軽度な変形は日常生活の中で取り組めるケアによってある程度の改善が見込めます。ただし、骨の変形は一度起きるともとに戻すことは難しく、それ以上の進行を早期に食い止めるか、症状を緩和するための対症療法を行うかが基本的な考え方となります。当院では院内で行うリハビリテーションのほか、ご自宅でも取り組める効果的なストレッチや日常生活におけるさまざまな動きの工夫についても細かくアドバイスさせていただいております。股関節は日常生活に関わるほとんどの動きと連動していると言っても過言ではないほど重要な部位です。深刻な事態を回避するためにも、異変を感じたらまずは早期に診察にお越しください。

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